狂人日记

中日文对照小说《狂人日记》揭示了封建礼教的“吃人”本质,表现了作者对以封建礼教为主体内涵的中国封建文化的反抗...

狂人日記
        某[ぼう:くれ‐がし/なにがし/それがし]といえるもの兄弟、今その名を秘[ひ・す]すも、みな余が往時、中学校にありし時代の良友なり。隔てて住むこと多年、音沙汰[おと‐さた]ようやく希なりし。先頃、たまたまその一人の大病[たい‐びょう]せし由をきく。あたかも故郷に帰るに際し、道を迂回して訪れつるに、一人にのみ会えりしが、病みしは弟なりと言う。遠路の見舞いかたじけなし、されど当人は病すでに癒えて、某地に候補となりて赴任せり、かく言いもて大いに笑い、日記帳二冊を取り出して余に示して曰く、これを見たまえ、当時の病状を知りたまわん、旧友に献ずるは差し支え無し、と。持ち帰りて一読するに、けだしその病の「被害妄想狂」の類なりしことを知る。語るところ極めて錯雑し、順序次第なく、荒唐の言また多し。月日は記さざれど、墨色と字体の一様ならざるにより、その一時になりしにあらざるや必せり。間にやや脈絡をそなうる箇所あり、今これを抜粋[ばっ-すい]して一篇となし、医家の研究材料に供せんとす。日記中に語の誤りあれど、一字も訂正[てい-せい]せず。ただ人名のみは、すべて村人にして世の有名人ならず、はばかるところ無しと言えども、すべてこれを改めたり。更に書名は、もと本人の全快後に題せしものなれば、あえて新たむること無し。民国七年四月二日記す。
  

  今夜は、月がいい。
  俺はあれを見なくなってから、三十年以上たつ。今日は見たから、気分がじつにいい。してみると、これまでの三十年以上は、まったく正気[しょう‐き:精神が正常であること/気がたしかなこと/たしかな心]でなかったわけだ。だが十分用心しなきゃならん。でないと、あの趙家の犬が何故俺をじろじろ見るのか。
  俺はダテに怖がってるんじゃないぞ。
  

  今日はまるきり月がない。俺はまずいと思った。朝、用心して家を出ると、 趙貴翁の目つきがおかしい。俺を怖がっているようでもあるし、俺を亡きものにしようと謀っているようでもある。他にも七、八人、ひそひそ耳打ちして、俺の悪口を言っている奴がある。そのくせ、俺に見られるのが怖いのだ。往来で会った奴が、みんなそうだ。中でも一番人相の悪いのが、大口を開けて、俺を見て笑いやがった。俺は頭のてっぺんから足の先まで、ぞっとなった。奴ら、すっかり手筈を整えたな、と思った。
  しかし、俺は怖くなかった。平気で歩いていった。向こうの方に子供がかたまっていて、これも俺の悪口を言っていた。目つきは趙貴翁と同じだし、顔色もどす黒い。俺は、子供たちが何の恨みがあって、子供たちまでこんな真似をするのかと思ったら、我慢できなくなって
 「言ってみろ!」
 と怒鳴ってやった。そしたら逃げていってしまった。
  俺は考えた。趙貴翁は俺に何の恨みがあるのか。通行人は俺に何の恨みがあるのか。あると言えば、二十年前に、古久先生の古い大福帳を踏んづけて、古久先生に嫌な顔をされたことがあるだけじゃないか。趙貴翁は古久先生の友人ではないが、きっとその噂を聞いて、俺のことを憤慨しているんだろう。そして通行人を唆して、俺を憎むように仕向けているんだろう。ところで、子供はどうだ。あの頃は生まれてもいないじゃないか。そのくせ、何故今日は、俺を怖がっているような、俺を亡きものにしようと計るような、変な目つきで俺を睨むんだ。こればっかりは、恐ろしいことだ。不思議なことだし、悲しいことだ。
  そうだ、分かった。おやじや、おふくろたちが教えたんだ。
  

  夜、どうしても眠れない。物事はすべて、研究してみないとわからんものだ。
  奴ら......その中には、県知事に枷をはめられた奴もいる。ボスに引っぱたかれた奴もいる。役人に細君を寝取られた奴もいる。親父やおふくろを借金取りにいじめ殺された奴もいる。しかし、その時の奴らの顔つきだって、昨日のように恐ろしくはなかったし、ものすごくはなかった。
  中でも不思議なのは、昨日往来で会ったあの女だ。自分の息子を殴りながら「ちくしょう、おやじめ! あたしゃ、おまえさんに食らいついてやらなきゃ、腹の虫がおさまらない」と言っているのだ。そのくせ、目は俺の方を向いている。俺はドキッとなって、うろたえてしまった。そうすると、あの青い顔の、歯を剥き出した奴らどもが、どっと笑うのだ。陳老五が、急いでやってきて、むりやり俺を引き摺って家へ連れて帰ったっけ。
  引き摺って家へ帰った。家の者はみな、よそよそしいふうをしてやがる。奴らの目つきは、他の連中と同じなんだ。書斎へ入ったら、外から鍵をかけやがった。まるで鶏かアヒルでも追い込んだみたいさ。この一件で、俺はますます奴らのからくりが分からなくなった。
  二、三日前、狼子村から小作人が来て、不作をこぼして、兄貴に話して言ったっけ。奴らの村に大悪人がいて、みんなに殴り殺されたが、そいつの内臓をえぐり出して、油で炒めて食った奴があるそうで、そうすると肝っ玉が太くなるという話だ。俺がちょっと脇から口を入れたら、小作人と兄貴とが、じろじろ俺の方を見たっけ。今日やっと分かった。奴らの目つきは、町にいた連中の目つきにそっくりそのままじゃないか。
  思い出しただけで、俺は頭のてっぺんから足の先まで、ぞっとなる。
  奴らは人間を食いやがる。してみると、俺を食わないという道理はない。
  そうだ、あの女が「おまえさんに食らいついてやる」と言ったのと、あの顔の青い、歯を剥き出した連中が笑ったのと、こないだあの小作人がしゃべったこととは、てっきり暗号なのだ。そうだ、分かった。奴らの言うことはみんな毒だ。笑いの中には刀がある。奴らの歯はみんな白くてピカピカだ。あれは人間を食う道具なのだ。
  俺は自分では、悪人でないつもりだったが、古久先生の家の大福帳を踏んづけて以来、少し怪しくなった。奴らは何か考えているらしいが、俺には見当がつかぬ。まして、奴らは仲違いするとすぐ人を悪人呼ばわりするのだ。俺は今でもまだ覚えている。兄貴が俺に論文の書き方を習わせたとき、どんな善人でも少しけなしてやると、丸を沢山くれたっけ。悪人を弁護してやると「奇想天外」だとか「独創的」だと言って褒めてくれたっけ。奴らが何を考えているのか、俺に見当のつくはずはない。まして、食おうと思っている際なんだから。
  物事はすべて、研究してみないことには分からない。昔から絶えず、人間を食ったと俺は覚えているが、あまりはっきりしない。俺は歴史をひっくり返して調べてみた。この歴史には年代が無くて、どのページにも「仁義道徳」などの字がくねくね書いてある。俺は、どうせ眠れないから、夜半までかかって丹念に調べた。そうすると字と字の間からやっと字が出てきた。本には一面に「食人」の二字が書いてあった。
  本にはこんなに沢山書いてある。小作人はあんなに沢山しゃべった。そのくせ、にやにや笑いながら、変な目で俺を睨み付けやがる。
  俺だって人間だ。奴らは、俺が食いたくなったんだ。
  

  朝、しばらく静坐した。陳老五が飯を運んできた。野菜が一皿、魚の蒸したのが一皿。その魚の目は、白くてコチコチで、ぱっくり口を開けているところは、あの人間を食いたがっている人間どもと同じだ。少し箸をつけてみたが、ヌルヌルしていて、魚だか人間だか分かりゃしない。腹の中のものを洗いざらい吐き出してしまった。
 「老五(lao3wu3らおうぅー)、兄貴に言ってくれ、俺は退屈でたまらんから、庭を散歩したい」
 と言うと、老五の奴、返事もしないでいってしまった。だがまもなくやってきて、戸を開けてくれた。
  俺は動かなかった。奴らが俺をどう処置するか、見ていてやろうと思った。どうせ、俺を釈放する気の無いことは分かっている。やっぱりその通りだった。兄貴が一人の老人を案内して、のろのろ入ってきた。無気味な目つきをした奴だ。その目つきを俺に気取られまいとして、下ばかり向いてやがる。そして眼鏡の縁から、チラチラ俺の様子を伺う。兄貴が
 「今日はだいぶ具合がいいようだね」と言うから
 「ええ」と答えた。兄貴が
 「今日は何先生に診察してもらうことにしたよ」と言うから
 「そうですか」
 と言ってやったが、この老人が首切り人の化けたのだくらいは百も承知の上だ。脈を診ると言う口実で肉付きの加減を見るに決まっている。その功によって自分も肉の一切れも分けてもらうつもりだろう。俺は、怖くなんかない。人間こそ食わないが、肝は奴らより太いんだ。げんこつを二つ突き出して、奴が何をするかを見ていた。奴は腰掛けて、目を瞑って、長いことモソモソやって、長いことポカンとしていた。それから例の不気味な目を開けて
 「くよくよせんでな。静かに養生すればすぐに良くなります」と言った。
  くよくよせんで、静かに養生しろ! 養生して肥えれば、無論、奴らはそれだけよけい食えるわけだ。だが、俺に何の良いことがあるか。何が「良くなります」だ。奴ら一味は、人間を食いたがっているくせに、変にビクビクして、体裁ばかり気にして、思い切って手を下すことが出来ないのは、笑止千万な話だ。俺はこらえ切れなくなって、大声で笑ってやったら、すっかりいい気持ちになった。この笑いには勇気と正気が満ちあふれているのが、自分でも分かった。老人と兄貴とは、顔色を変えて、俺の勇気と正気とに圧倒されてしまった。
  だが、俺に勇気があればこそ、奴らはいっそう俺を食いたがる。その勇気にあやかりたいのだ。老人は部屋を出ていってまもなく、小声で兄貴にささやいた。
 「さっさと食うんですな」
 兄貴はうなずいた。そうか、兄貴もか、と俺は思った。この大発見は、意外のようであって、実は意外ではなかった。グルになって俺を食おうとする人間が、俺の兄貴なのだ。
  人間を食うのが俺の兄貴だ。
  俺は、人間を食う人間の弟だ。
  俺自身が食われてしまっても、依然として俺は人間を食う人間の弟だ。
  

  この二、三日は、一歩退いて考えてみた。仮にあの老人が、首切り人の化けたのではなくて、正銘の医者だとしても、人間を食う人間であることに変わりはない。奴らの祖師の李時珍の作った『本草なんとか』という本には、人肉は煮て食えるとはっきり書いてあるじゃないか。これでも奴は「私は人間を食いません」と言えるか。
  うちの兄貴だってそうだ。れっきとした証拠がある。俺に本を教えてくれたとき、確か「子を易(か)えて食う」ことは有り得ることだと自分の口から言ったはずだ。それからまた、何だったかである悪人を論じた時、そいつは殺すばかりでなく「肉を食らい、皮に寝(い)ね」てしかるべきだと言ったことがある。その頃、俺はまだ小さかったので、心臓がいつまでもドキドキしていた。こないだだって、狼子村の小作人が来て、肝を食った話をしたとき、兄貴は眉一つ動かさず、頻りにうなずいていた。これでみたって、昔と同じように心が残忍なことが分かる。「子を易(か)えて食う」ことがありうるとしたら、何だって易えられるはずだ。誰だって食えるはずだ。俺は昔は、兄貴のお説教をただぼんやり聞き流していただけだったが、今にして思うと、奴がお説教するときには、きっと口のはたに人間の油を擦りつけていたばかりでなく、心には人間を食いたい欲望がいっぱい詰まっていたに違いない。
  

  真っ暗だ。昼間だか夜だか分からない。趙(zhao4ちゃお)家の犬がまた吠え出した。
  獅子のような邪心、兎の臆病、狐の狡猾......
  

  俺は分かった。奴らの手口はこうだ。バッサリやってしまうのは、やりたくないし、またやれないのだ。たたりが怖いからだ。そこでみんなで連絡を取って、網を張り巡らせておいて、嫌でも応でも俺に自殺されるよう仕向けているのだ。そうだ。こないだ町で見た男や女の様子からしたって、この頃の兄貴の挙動からしたって、八、九分通りそれに間違いない。俺が自分で腰帯をといて、梁にかけて、自分でぶら下がって死んでしまえというんだろう。奴らは殺人の罪名を着ないで、しかも念願が叶うという寸法だ。飛び上がって喜んで、ウーウー悲鳴をあげて笑うだろうな。そうでもないとしたら、悶え苦しんで、悶え死んでしまうかだ。これだと肉は落ちるが、まぁまぁご満足というところだろう。
  奴らは、死肉しか食えないのだ......そうだ、何かの本で読んだことがある。「ハイエナ」とか言う動物がいるそうだ。目つきも、体つきも、醜悪な動物だ。いつも死肉を食っていて、どんな太い骨でも、バリバリ噛んで飲み込んでしまうそうだ。考えただけでも恐ろしい。「ハイエナ」は狼の親類で、狼は犬の本家だ。こないだ趙家の犬が、ジロジロ俺を見ていたのは、奴も一味で、連絡がついていたと見える。老人は目を伏せて、下ばかり向いていたが、そんなことで俺が騙せるものか。
  一番気の毒なのは、兄貴さ。奴だって人間だ。どうして怖がらないのだ。おまけに、グルになって俺を食うなんて。慣れっこになってしまって、悪いと思わないのだろうか。それとも良心を失ってしまって、知りつつやるのだろうか。
  俺は、人間を食う人間を呪うのに、まず兄貴から呪い始めよう。人間を食う人間を改心させるのに、まず兄貴から改心させよう。
  

  しかし、こんな理屈は、もう今では、奴らに分かっていいはずなんだが......
  突然、一人の男がやってきた。年はせいぜい二十歳前後、顔かたちははっきりしない。ニコニコしながら、俺に向かって会釈した。だがその笑いも、どうも本当の笑いでなかった。俺は尋ねてやった。
 「人間を食うことは、正しいか?」
 その男は、相変わらずニコニコしながら答えた。
 「飢饉でもないのに、人間を食ったりするものか」
 俺はすぐに悟った。こいつも一味で、人間を食いたがっているんだ。そこで勇気百倍、あくまで問いつめてやった。
 「正しいか?」
 「そんなこと聞いて、どうするんです。あなたは、まったく......冗談が上手い......今日はいい天気ですね」
  いい天気だった。月も明るい。だが、俺はお前に聞いているのだ。
 「正しいか?」
  彼はそうだとは言わなかった。曖昧な口調で
 「いや......」と言った。
 「正しくない? じゃ、奴らはなぜ食うんだ」
 「そんな馬鹿な......」
 「そんな馬鹿な? 現に狼子村では食っている。おまけに本にも書いてある。真っ赤な、新鮮な」
  彼はさっと顔色を変えた。鉄のように青い色になった。目をまん丸くして、
 「そりゃ、あるかも知れませんがね、昔からそうだったので......」
 「昔からそうだったのなら、正しいか?」
 「そんな議論、あなたとはしませんよ。とにかく、あなたはしゃべってはいけない。おっしゃることはみな、間違いです」
  俺は飛び起きた。目を開けてよく見たら、その男の姿はなかった。全身にぐっしょり汗をかいていた。あいつは年は俺の兄貴よりずっと下のくせに、もう一味なのだ。きっと、親父かおふくろが教え込んだに違いない。もう自分の息子にも教えてしまったかもしれん。だからこそ、子供までが俺を憎々しげに見るのだ。
  

  自分では人間を食おうとし、しかし他人からは食われまいとするから、疑心暗鬼で、お互いにジロジロ相手を盗み見合っている......
  こんな考えを棄てて、安心して仕事をし、往来を歩き、飯を食い、眠ったら、どんなに気持ちがいいだろう。それはほんの一またぎ、一つの関を越えるだけだ。だが、奴らは親子、兄弟、夫婦、友人、師弟、仇敵、それに見も知らぬ他人同士まで一緒になって、お互いに励ましあい、お互いに牽制しあって、死んでもこの一歩を踏み越そうとしないのだ。
  

  朝早く、兄貴に会いに行った。兄貴は部屋の外に立って、空を眺めていた。俺は後ろに回って、入り口に立ち塞がって、ごく穏やかに、ごくおとなしく、話しかけた。
 「兄さん、お話したいことがあるんですが」
 「言ってごらん」
 と、兄はすぐ振り向いて、うなずいてみせた。
 「ちょっとしたことなんです。それが上手く言えないんです。兄さん、たぶん大昔は、人間が野蛮だった頃は、誰でも人間を食ったんでしょうね。それが後になると、考えが変わったために、あるものは人間を食わなくなって、ひたすら良くなろうと努力したために、それで人間になりました。真実の人間になりました。ところが、あるものはやはり人間を食った......虫だって同じです。あるものは魚になり、鳥になり、猿になり、とうとう人間になりました。あるものは、良くなろうとしなかったために、今でもまだ虫のままです。この人間を食う人間は、人間を食わない人間に比べて、どんなに恥ずかしいでしょうね。虫が猿に比べて恥ずかしいより、もっともっと恥ずかしいでしょうね。
 「易牙が自分の子を蒸して、桀紂に食わせた話は、あれはずっと大昔のことなんでしょうか。そうじゃないんです。盤古が天地を開いて以来、ずっと食い続けて易牙の子に至り、易牙の子からずっと食い続けて徐錫林にいたり、徐錫林からずっと食い続けて、狼子村で捕まった男に至るのです。去年、城内で囚人が処刑されたときは、肺病病みがその血をパンに付けてなめました」
 「奴らは僕を食うんです。そりゃ、兄さん一人じゃ、なんともならないでしょう。しかし、だからといって仲間に入ることは、ないじゃありませんか。人間を食う人間は、どんなことだってやりますよ。僕を食うからには、兄さんだって食いますよ。仲間同士で食い合いますよ。ただ、一歩だけ向きを変えれば、今すぐ改心さえすれば、みんな太平になるんです。昔からそうだったかも知れませんが、僕達今日からでも、一生懸命に心を入れ替えて、いけない、って言えばいいんですよ。兄さん、あなたは言えると僕は思います。だって、この間小作人が年貢を減らしてくれと言ったとき、兄さんは、いけない、って言ったじゃありませんか」
  初めの内、兄は冷笑を浮かべているだけだったが、やがて目つきが険しくなってきて、奴らの内幕をすっぱ抜いてやった途端に、顔が真っ青になった。表門の外に大勢人が立っていた。趙貴翁も、その犬もまじっていた。その連中が、恐る恐る門の中へ入ってきた。ある者は顔が分からない。切れをかぶっているらしい。あるものは例の青い顔の、歯を剥き出した奴で、にやにやしてやがる。見覚えのある一味の奴らだ。どれも人間を食う人間どもだ。ただし、奴らの間に考え方の食い違いがあることも分かっている。昔からそうだったから、食うのが当たり前だと思っている奴と、食ってはいけないと知りつつ食いたがっている奴とだ。おまけに、すっぱ抜かれるのが困るものだから、俺の言うことを聞いてカンカンに腹を立てているくせに、ニヤニヤせせら笑っていやがるのだ。
  その時、兄貴が急に怖い顔をして、大声で怒鳴った。
 「出ていけ! 気違いは見せ物じゃない!」
  その時、俺はまた、奴らの妙計に気が付いた。奴らは、改心するどころか、とっくに罠をこしらえてあるのだ。気違いという看板を用意しておいて、俺におっかぶせやがったんだ。こうすれば将来、食った場合に太平無事であるばかりでなく、中には同情してくれるものもあろうというものだ。小作人の話にあった、みんなで一人の悪人を食ったというのも、てっきりこのやり口だ。これが奴らの常套手段だ。
  陳老五も、プリプリしてやってきた。だが、俺の口が塞げるものか。俺はあくまで、この連中に言ってやった。
 「お前たち、改心するがいい。心底から改心するんだ。いいか、今に人間を食う人間は、この世にいれられなくなるんだぞ。生きていかれなくなるんだぞ。」
 「お前たち、もし改心しないと、自分も食われてしまうぞ。いくら沢山産んだって、みんな真実の人間に滅ぼされてしまうぞ。猟師が狼を狩り尽くすと同じように......虫けらと同じように」
  その大勢の奴らは、みんな陳老五に追い払われてしまった。兄貴もどこかへ行ってしまった。陳老五が俺をなだめて、部屋へ連れて帰らせた。部屋の中は真っ暗だった。梁や垂木が、頭の上で震え出した。ブルブル震えていたと思うと、急にでかくなって、俺の上へのしかかってきた。
  重い。実に重い。身動きもできない。奴は、俺を殺そうと言うのか。だが俺は、奴の重さがまやかしだと気が付いたから、身をもがいて抜け出したが、汗をびっしょりかいた。それでも俺は言ってやった。
 「お前たち、今すぐ改心しろ。心底から改心しろ。いいか、今に人間を食う人間は、この世にいられなくなるんだぞ......」
  
十一
  太陽もでない。戸も開かない。毎日二度の飯。
  俺は箸を取り上げると、兄貴のことを思い出した。妹が死んだわけも、奴にあることに気が付いた。あの時、俺の妹は五つになったばかりだった。かわいい、いじらしい様子が今でも目に浮かぶ。おふくろは泣き通しだった。兄貴はおふくろに、あまり泣くなと言った。自分が食ったものだから、泣かれるといくらか気がとがめるのだろう。もしまだ気がとがめるなら......
  妹は兄貴に食われた。おふくろは知っていたろうか。俺には分からぬ。
  おふくろも、たぶん知っていたろう。だが、泣いたときは何も言わなかった。たぶん、当たり前のことだと思っていたんだろう。確か俺が四、五歳だったと思うが、部屋の外で涼んでいるとき、兄貴がこんなことを言ったっけ。父母が病気になったら、子たるものは自分の肉を一切れ切り取って、よく煮て父母に食わせるのが立派な人間だ、と。その時おふくろも、それがいけないとは言わなかった。一切れが食えるなら、無論、丸ごとだって食えるわけさ。だが、あの時の泣き様は、今思い出しても胸が痛む。実に不思議なことだ。
  
十二
  考えられなくなった。
  四千年来、絶えず人間を食ってきたところ、そこに俺も長年暮らしてきたんだということが、今日やっと分かった。兄貴が家を管理しているときに妹は死んだ。奴がこっそり料理に混ぜて、俺たちにも食わせなかったとは言えない。
  俺は知らぬ間に、妹の肉を食わせられなかったとはいえん。いま番が俺に回ってきて......
  四千年の食人の歴史を持つ俺。初めは分からなかったが、今分かった。真実の人間の得がたさ。
  
十三
  人間を食ったことのない子供は、まだいるだろうか。
  子供を救え......
                        

        一九一八年四月
 


 
作品原文

狂人日记

序⑴

某君昆仲,今隐其名,皆余昔日在中学时良友;分隔多年,消息渐阙。日前偶闻其一大病;适归故乡,迂道往访,则仅晤一人,言病者其弟也。劳君远道来视,然已早愈,赴某地候补⑵矣。因大笑,出示日记二册,谓可见当日病状,不妨献诸旧友。持归阅一过,知所患盖“迫害狂”之类。语颇错杂无伦次,又多荒唐之言;亦不著月日,惟墨色字体不一,知非一时所书。间亦有略具联络者,今撮录一篇,以供医家研究。记中语误,一字不易;惟人名虽皆村人,不为世间所知,无关大体,然亦悉易去。至于书名,则本人愈后所题,不复改也。七年四月二日识。


今天晚上,很好的月光。
我不见他,已是三十多年;今天见了,精神分外爽快。才知道以前的三十多年,全是发昏;然而须十分小心。不然,那赵家的狗,何以看我两眼呢?
我怕得有理。


今天全没月光,我知道不妙。早上小心出门,赵贵翁的眼色便怪:似乎怕我,似乎想害我。还有七八个人,交头接耳的议论我,张着嘴,对我笑了一笑;我便从头直冷到脚根,晓得他们布置,都已妥当了。
我可不怕,仍旧走我的路。前面一伙小孩子,也在那里议论我;眼色也同赵贵翁一样,脸色也铁青。我想我同小孩子有什么仇,他也这样。忍不住大声说,“你告诉我!”他们可就跑了。
我想:我同赵贵翁有什么仇,同路上的人又有什么仇;只有廿年以前,把古久先生的陈年流水簿子⑶,踹了一脚,古久先生很不高兴。赵贵翁虽然不认识他,一定也听到风声,代抱不平;约定路上的人,同我作冤对。但是小孩子呢?那时候,他们还没有出世,何以今天也睁着怪眼睛,似乎怕我,似乎想害我。这真教我怕,教我纳罕而且伤心。
我明白了。这是他们娘老子教的!


晚上总是睡不着。凡事须得研究,才会明白。
他们——也有给知县打枷过的,也有给绅士掌过嘴的,也有衙役占了他妻子的,也有老子娘被债主逼死的;他们那时候的脸色,全没有昨天这么怕,也没有这么凶。
最奇怪的是昨天街上的那个女人,打他儿子,嘴里说道,“老子呀!我要咬你几口才出气!”他眼睛却看着我。我出了一惊,遮掩不住;那青面獠牙的一伙人,便都哄笑起来。陈老五赶上前,硬把我拖回家中了。
拖我回家,家里的人都装作不认识我;他们的脸色,也全同别人一样。进了书房,便反扣上门,宛然是关了一只鸡鸭。这一件事,越教我猜不出底细。
前几天,狼子村的佃户来告荒,对我大哥说,他们村里的一个大恶人,给大家打死了;几个人便挖出他的心肝来,用油煎炒了吃,可以壮壮胆子。我插了一句嘴,佃户和大哥便都看我几眼。今天才晓得他们的眼光,全同外面的那伙人一模一样。
想起来,我从顶上直冷到脚跟。
他们会吃人,就未必不会吃我。
你看那女人“咬你几口”的话,和一伙青面獠牙人的笑,和前天佃户的话,明明是暗号。我看出他话中全是毒,笑中全是刀。他们的牙齿,全是白厉厉的排着,这就是吃人的家伙。
照我自己想,虽然不是恶人,自从踹了古家的簿子,可就难说了。他们似乎别有心思,我全猜不出。况且他们一翻脸,便说人是恶人。我还记得大哥教我做论,无论怎样好人,翻他几句,他便打上几个圈;原谅坏人几句,他便说“翻天妙手,与众不同”。我那里猜得到他们的心思,究竟怎样;况且是要吃的时候。
凡事总须研究,才会明白。古来时常吃人,我也还记得,可是不甚清楚。我翻开历史一查,这历史没有年代,歪歪斜斜的每叶上都写着“仁义道德”几个字。我横竖睡不着,仔细看了半夜,才从字缝里看出字来,满本都写着两个字是“吃人”!
书上写着这许多字,佃户说了这许多话,却都笑吟吟的睁着怪眼看我。
我也是人,他们想要吃我了!


早上,我静坐了一会儿。陈老五送进饭来,一碗菜,一碗蒸鱼;这鱼的眼睛,白而且硬,张着嘴,同那一伙想吃人的人一样。吃了几筷,滑溜溜的不知是鱼是人,便把他兜肚连肠的吐出。
我说“老五,对大哥说,我闷得慌,想到园里走走。”老五不答应,走了;停一会,可就来开了门。
我也不动,研究他们如何摆布我;知道他们一定不肯放松。果然!我大哥引了一个老头子,慢慢走来;他满眼凶光,怕我看出,只是低头向着地,从眼镜横边暗暗看我。大哥说,“今天你仿佛很好。”我说“是的。”大哥说,“今天请何先生来,给你诊一诊。”我说“可以!”其实我岂不知道这老头子是刽子手扮的!无非借了看脉这名目,揣一揣肥瘠:因这功劳,也分一片肉吃。我也不怕;虽然不吃人,胆子却比他们还壮。伸出两个拳头,看他如何下手。老头子坐着,闭了眼睛,摸了好一会,呆了好一会;便张开他鬼眼睛说,“不要乱想。静静的养几天,就好了。”
不要乱想,静静的养!养肥了,他们是自然可以多吃;我有什么好处,怎么会“好了”?他们这群人,又想吃人,又是鬼鬼祟祟,想法子遮掩,不敢直截下手,真要令我笑死。我忍不住,便放声大笑起来,十分快活。自己晓得这笑声里面,有的是义勇和正气。老头子和大哥,都失了色,被我这勇气正气镇压住了。
但是我有勇气,他们便越想吃我,沾光一点这勇气。老头子跨出门,走不多远,便低声对大哥说道,“赶紧吃罢!”大哥点点头。原来也有你!这一件大发见,虽似意外,也在意中:合伙吃我的人,便是我的哥哥!
吃人的是我哥哥!
我是吃人的人的兄弟!
我自己被人吃了,可仍然是吃人的人的兄弟!


这几天是退一步想:假使那老头子不是刽子手扮的,真是医生,也仍然是吃人的人。他们的祖师李时珍做的“本草什么⑷”上,明明写着人肉可以煎吃;他还能说自己不吃人么?
至于我家大哥,也毫不冤枉他。他对我讲书的时候,亲口说过可以“易子而食⑸”;又一回偶然议论起一个不好的人,他便说不但该杀,还当“食肉寝皮⑹”。我那时年纪还小,心跳了好半天。前天狼子村佃户来说吃心肝的事,他也毫不奇怪,不住的点头。可见心思是同从前一样狠。既然可以“易子而食”,便什么都易得,什么人都吃得。我从前单听他讲道理,也糊涂过去;现在晓得他讲道理的时候,不但唇边还抹着人油,而且心里满装着吃人的意思。


黑漆漆的,不知是日是夜。赵家的狗又叫起来了。
狮子似的凶心,兔子的怯弱,狐狸的狡猾,……


我晓得他们的方法,直捷杀了,是不肯的,而且也不敢,怕有祸祟。所以他们大家连络,布满了罗网,逼我自戕。试看前几天街上男女的样子,和这几天我大哥的作为,便足可悟出八九分了。最好是解下腰带,挂在梁上,自己紧紧勒死;他们没有杀人的罪名,又偿了心愿,自然都欢天喜地的发出一种呜呜咽咽的笑声。否则惊吓忧愁死了,虽则略瘦,也还可以首肯几下。
他们是只会吃死肉的!——记得什么书上说,有一种东西,叫“海乙那⑺”的,眼光和样子都很难看;时常吃死肉,连极大的骨头,都细细嚼烂,咽下肚子去,想起来也教人害怕。“海乙那”是狼的亲眷,狼是狗的本家。前天赵家的狗,看我几眼,可见他也同谋,早已接洽。老头子眼看着地,岂能瞒得我过。
最可怜的是我的大哥,他也是人,何以毫不害怕;而且合伙吃我呢?还是历来惯了,不以为非呢?还是丧了良心,明知故犯呢?
我诅咒吃人的人,先从他起头;要劝转吃人的人,也先从他下手。


其实这种道理,到了现在,他们也该早已懂得,……
忽然来了一个人;年纪不过二十左右,相貌是不很看得清楚,满面笑容,对了我点头,他的笑也不像真笑。我便问他,“吃人的事,对么?”他仍然笑着说,“不是荒年,怎么会吃人。”我立刻就晓得,他也是一伙,喜欢吃人的;便自勇气百倍,偏要问他。
“对么?”
“这等事问他什么。你真会……说笑话。……今天天气很好。”
天气是好,月色也很亮了。可是我要问你,“对么?”
他不以为然了。含含胡胡的答道,“不……”
“不对?他们何以竟吃?!”
“没有的事……”
“没有的事?狼子村现吃;还有书上都写着,通红崭新!”
他便变了脸,铁一般青。睁着眼说,“有许有的,这是从来如此……”
“从来如此,便对么?”
“我不同你讲这些道理;总之你不该说,你说便是你错!”
我直跳起来,张开眼,这人便不见了。全身出了一大片汗。他的年纪,比我大哥小得远,居然也是一伙;这一定是他娘老子先教的。还怕已经教给他儿子了;所以连小孩子,也都恶狠狠的看我。


自己想吃人,又怕被别人吃了,都用着疑心极深的眼光,面面相觑。……
去了这心思,放心做事走路吃饭睡觉,何等舒服。这只是一条门槛,一个关头。他们可是父子兄弟夫妇朋友师生仇敌和各不相识的人,都结成一伙,互相劝勉,互相牵掣,死也不肯跨过这一步。


大清早,去寻我大哥;他立在堂门外看天,我便走到他背后,拦住门,格外沉静,格外和气的对他说,
“大哥,我有话告诉你。”
“你说就是,”他赶紧回过脸来,点点头。
“我只有几句话,可是说不出来。大哥,大约当初野蛮的人,都吃过一点人。后来因为心思不同,有的不吃人了,一味要好,便变了人,变了真的人。有的却还吃,——也同虫子一样,有的变了鱼鸟猴子,一直变到人。有的不要好,至今还是虫子。这吃人的人比不吃人的人,何等惭愧。怕比虫子的惭愧猴子,还差得很远很远。
“易牙⑻蒸了他儿子,给桀纣吃,还是一直从前的事。谁晓得从盘古开辟天地以后,一直吃到易牙的儿子;从易牙的儿子,一直吃到徐锡林⑼;从徐锡林,又一直吃到狼子村捉住的人。去年城里杀了犯人,还有一个生痨病的人,用馒头蘸血舐。
“他们要吃我,你一个人,原也无法可想;然而又何必去入伙。吃人的人,什么事做不出;他们会吃我,也会吃你,一伙里面,也会自吃。但只要转一步,只要立刻改了,也就是人人太平。虽然从来如此,我们今天也可以格外要好,说是不能!大哥,我相信你能说,前天佃户要减租,你说过不能。”
当初,他还只是冷笑,随后眼光便凶狠起来,一到说破他们的隐情,那就满脸都变成青色了。大门外立着一伙人,赵贵翁和他的狗,也在里面,都探头探脑的挨进来。有的是看不出面貌,似乎用布蒙着;有的是仍旧青面獠牙,抿着嘴笑。我认识他们是一伙,都是吃人的人。可是也晓得他们心思很不一样,一种是以为从来如此,应该吃的;一种是知道不该吃,可是仍然要吃,又怕别人说破他,所以听了我的话,越发气愤不过,可是抿着嘴冷笑。
这时候,大哥也忽然显出凶相,高声喝道,“都出去!疯子有什么好看!”
这时候,我又懂得一件他们的巧妙了。他们岂但不肯改,而且早已布置;预备下一个疯子的名目罩上我。将来吃了,不但太平无事,怕还会有人见情。佃户说的大家吃了一个恶人,正是这方法。这是他们的老谱!
陈老五也气愤愤的直走进来。如何按得住我的口,我偏要对这伙人说,“你们可以改了,从真心改起!要晓得将来容不得吃人的人,活在世上。
“你们要不改,自己也会吃尽。即使生得多,也会给真的人除灭了,同猎人打完狼子一样!——同虫子一样!”
那一伙人,都被陈老五赶走了。大哥也不知那里去了。陈老五劝我回屋子里去。屋里面全是黑沉沉的。横梁和椽子都在头上发抖;抖了一会,就大起来,堆在我身上。
万分沉重,动弹不得;他的意思是要我死。我晓得他的沉重是假的,便挣扎出来,出了一身汗。可是偏要说,“你们立刻改了,从真心改起!你们要晓得将来是容不得吃人的人,……”

十一
太阳也不出,门也不开,日日是两顿饭。
我捏起筷子,便想起我大哥;晓得妹子死掉的缘故,也全在他。那时我妹子才五岁,可爱可怜的样子,还在眼前。母亲哭个不住,他却劝母亲不要哭;大约因为自己吃了,哭起来不免有点过意不去。如果还能过意不去,……妹子是被大哥吃了,母亲知道没有,我可不得而知。
母亲想也知道;不过哭的时候,却并没有说明,大约也以为应当的了。记得我四五岁时,坐在堂前乘凉,大哥说爷娘生病,做儿子的须割下一片肉来,煮熟了请他吃⑽,才算好人;母亲也没有说不行。一片吃得,整个的自然也吃得。但是那天的哭法,现在想起来,实在还教人伤心,这真是奇极的事!

十二
不能想了。
四千年来时时吃人的地方,今天才明白,我也在其中混了多年;大哥正管着家务,妹子恰恰死了,他未必不和在饭菜里,暗暗给我们吃。
我未必无意之中,不吃了我妹子的几片肉,现在也轮到我自己,……有了四千年吃人履历的我,当初虽然不知道,现在明白,难见真的人!

十三
没有吃过人的孩子,或者还有?
救救孩子……
一九一八年四月。

词语注释

⑴序:亦称“叙”,或称“引”,又名“序言”、“前言”、“引言”,是放在著作正文之前的文章或一段“引言”。在这篇文章中,它是一个“引言”,以对下文做简单的交代。
⑵候补:清代官制,通过科举或捐纳等途径取得官衔,但还没有实际职务的中下级官员,由吏部抽签分发到某部或某省,听候委用,称为候补。
⑶古久先生的陈年流水簿子:这里比喻中国封建主义统治的长久历史。
⑷本草什么:指《本草纲目》,明代医学家李时珍(1518-1593)的药物学著作,共五十二卷。该书曾经提到唐代陈藏器《本草拾遗》中以人肉医治痨的记载,并表示了异议。这里说李时珍的书“明明写着人肉可以煎吃”,当是“狂人”的“记中语误”。
⑸易子而食:语见《左传》宣公十五年,是宋将华元对楚将子反叙说宋国都城被楚军围困时的惨状:“敝邑易子而食,析骸而爨。”
⑹食肉寝皮:语出《左传》襄公二十一年,晋国州绰对齐庄公说:“然二子者,譬于禽兽,臣食其肉而寝处其皮矣。”(按:“”指齐国的殖绰和郭最,他们曾被州绰俘虏过。)
⑺海乙那:英语hyena的音译,即鬣狗(又名土狼),一种食肉兽,常跟在狮虎等猛兽之后,以它们吃剩的兽类的残尸为食。
⑻易牙:春秋时齐国人,善于调味。据《管子·小称》:“夫易牙以调和事公(按:指齐桓公),公曰惟蒸婴儿之未尝,于是蒸其首子而献之公。”桀、纣各为中国夏朝和商朝的最后一代君主,易牙和他们不是同时代人。这里说的“易牙蒸了他儿子,给桀纣吃”,也是“狂人”“语颇错杂无伦次”的表现。
⑼徐锡林:隐指徐锡麟(1873-1907),字伯荪,浙江绍兴人,清末革命团体光复会的重要成员。1907年与秋瑾准备在浙、皖两省同时起义。7月6日,他以安徽巡警处会办兼巡警学堂监督身份为掩护,乘学堂举行毕业典礼之机刺死安徽巡抚恩铭,率领学生攻占军械局,弹尽被捕,当日惨遭杀害,心肝被恩铭的卫队挖出炒食。
⑽大哥说……煮熟了请他吃:指“割股疗亲”,即割取自己的股肉煎药,以医治父母的重病。这是封建社会的一种愚孝行为。《宋史·选举志一》:“上以孝取人,则勇者割股,怯者庐墓。”
 
 

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